長屋門修復4

土台の修復も完了して土壁の木舞の補修や荒壁塗りも終わり長屋門の内装の修復が始まった。

細工場のリーチと濱田が使ったロクロ台の修復とリーチが滞在していた「リーチルーム」の床の修復が始まっている。ロクロ台は傷んだ部材を新しい木材で修復し使える板材はそのまま使うという。新たに補修に使う材木類は濱田邸の裏山のヒノキなどを使用している。

「リーチルーム」の床板を外し内部を見ると土台を支えている束石や根太を支える太い材木も束もほとんど傷んでいない。束石の周りの土も乾燥していて床下は細工場部分より良い状態だ。大工の棟梁に聞くとほとんど元の材木を使えるとの事。「ギシギシ」音がする部分だけの修復で済みそうだ。板を張る前にシートを張り燻炭(籾殻を黒く蒸し焼きにしたもの)で防湿材と断熱材として敷き詰めている(昔は良く使われていたそうだ。)

ここで文化財に指定されていないが濱田庄司とバーナード・リーチという世界的な陶芸家の足跡のこの長屋門の修復と将来に向けての考察を。この偉大な二人に関わりのある建物をどういう風に修復すべきか改めて考える。濱田庄司の移築して建てた建物は民藝運動の足跡や文化活動としての意味として大変興味深く作品やコレクションだけでなく極めて重要な「濱田研究」の資料となるはずだ。

初めは茅葺き屋根の劣化が著しくそちらに目がいってしまって建物全体のことまで目が行き届かなかった。修復に向けて部分的に解体され土台や基礎などがあらわになることことにより色々な問題点が見えてきた。

前回も書いたが地形的な問題(濱田邸は里山の南斜面に建っている)のでこの長屋門は斜面の一番下になる。北関東の一般的な農家では平らな土地(又は、平らに整地してある)で雨水の問題が余り考慮しなくてもよいのだが、ここ濱田邸では斜面を段々に削って建物が建てられているので近年の様な「豪雨」があると長屋門に雨水が流れ込むことになる。濱田邸の一部を公益法人「濱田庄司記念益子参考館」として濱田庄司のコレクションの一部を展示するために建てられた建築群や元々濱田庄司が移築して参考館の一部として公益法人に移管した建物は雨水の処理設備があるのだが、この長屋門は私邸部分なので雨水の処理のための排水溝がない。将来のことを考えるとやはり排水溝は作るべきかと思われる。又、聞くところによれば「リーチルーム」も板張りではなく元々は畳敷きだったとか。修復のセオリーは「現状修理」が基本だがどの時点を現状とするかで修復の内容も変わる。理想はこの長屋門が現在地に移築された当時の姿に修復するのが良いのだが二つの問題が現在あるようだ。一つは移築当時の外観の資料と内部の資料があるかどうか。もう一つの点は資金の問題。今回のクラウドファンティングで集まった浄財では資金が足りない。更にここまで修復と保存措置(排水溝などや今後の短期的メンテナンスの費用)や専門家などの意見や見解などを仰ぐ必要もあるかも知れない。建築や茅葺などの職人達はしっかりした人達がいるので問題はないが(実際に修復された部材を使えるところは残し伝統工法の継ぎ手を使い傷みが激しいところだけ新しい材木で繋いでいる)この長屋門全体を修復保存するには文化的側面からのアドバイスが必要かと思われる。ただ、民藝全体の研究者はいても濱田庄司を専門に研究している専門家が居ないそうだ。中々一筋縄では行かないようだ。

移築当時の姿が再現出来て畳敷きの「リーチルーム」に寝巻きで布団に寝そべる長身のリーチの姿を想像出来たら何と楽しいことか。

濱田邸の立地表見の略図

長屋門の平面略図

基礎や土台などの略図。リーチルームでは床を貼るため束石で土台や床板を支える根太や根太を支える大引や束などで支えることで床下の通気が良く各部材が移築当時のまま使えるようだ。

長屋門の細工場部分のロクロ台の補修。傷んだ部材を取り除き新しい材木で。

リーチルームの床板を剥がして根太や大引が見える。横の材木が大引。縦の材木が根太。ほとんど問題がないらしいのでそのまま使うとのこと。しかし、一部は補修する。

束石と根太や大引を支える束。修復に関わる棟梁の話によると地面も大引も根太も乾燥していて問題ないと。

ほぼ修復の終わった細工場のロクロ台。台の上の板は元の部材。向かって左が濱田庄司の使ったロクロ台、右の大きいロクロ台がリーチの使った台と。リーチの方が長身なので大きかったそうだ。

リーチルームの一部床材の補修が終わって床板を貼る前にシートを張り根太の間に「籾殻の燻炭」を敷き詰めている。籾の燻炭は防湿、断熱効果があるそうだ。この後床板を貼ることになる。真ん中の画像に写っている小窓は明かり取りか?元は畳敷きだったと聞いているが、もし畳敷きに復元出来たら長身のリーチが寝間着を着て布団に横になっている姿を妄想できるのだが。

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